研究室紹介

研究室の特色
 私たちの研究室では、「生き物の振る舞いや性質が“物“とはどう異なるのか、また、何故異なるのか」に興味を持って実験的研究を遂行しています。「物理学科で何故生き物?」と思われる学生さんも多いと思います。確かに長い間、生き物は物理的な法則性に従うことが疑問視され、物とは異なる“生き物らしさ”の実態を科学的に理解することは難しいと信じられてきました。今や、そうした考え方も前世紀初頭までの遺物となり、現在盛んになりつつある「生物物理学」分野では、大勢の科学者がそれぞれのアイデアを持ってこの問題に取り組んでいます。
 生物物理学は、自分の体の内部で生じている身近な現象を探求する比較的新しい学問であり、多くの研究者が多様な切り口で研究を進めることで「生命とは何か?」という根源的な問題に対する理解が深められてきました。必要な予備知識や経験が比較的少ないために、「最先端の研究に触れるには博士まで進学して勉強し続けなければれない」といったこともありません。特別研究で得られた発見をもとに国際学会で口頭発表を行ったり、英字学術誌に論文を出版したり、学会で受賞した学生も過去に複数います。

研究内容
 私たち人間が作る機械は、主に金属やプラスチック、半導体等の硬い物質からなります。これらの硬い物質は外部環境の変化によりその性質や働きを変えることが殆どないために、個々の部品の特性から集団としての機械の働きを予測して設計することができます。他方で私たちの体を形成する組織は、金属や半導体と比べるとはるかに柔らかく形も定まらない物質(ゲルやコロイド、脂質膜等のソフトマター)からなり、その性状は僅かな外場の印加やエネルギーの注入により多彩に変化できます。こうした軟らかい物質からなる生命システムが、私たちの作る機械よりも高度な機能を発揮します。
 生命の最小単位である細胞内部の微細な空間には、ソフトマターからなる様々な小器官(部品や機械、それらの製造工場や輸送道路、動力機関)が目一杯に詰め込まれて、押し合いへし合いしています。これらの小器官はお互いに強く相互作用しながらも、モーター蛋白質と呼ばれる分子レベルの動力源により個別に操作されてその役割を果たします。細胞内部の複雑な組織構造も、こうした分子レベルの動力源によって系に力学的なエネルギーが注入されて生成する散逸構造です。こうした“複雑な非平衡状態”に置かれたソフトマターが、細胞の内外で繰り広げられる多彩な生命の営みを担ってますが、その振る舞いに関する物質科学的研究は始まったばかりであり、まだ殆ど明らかになってません。私達は、生体ソフトマターに多彩な非平衡挙動が生み出される物理法則を探索するための実験を工夫を凝らしながら進めることで、生命現象の物理的理解を深めることを目指しています。
 そこで当研究室では、1)実際に生きている培養細胞や生体組織、2)現実の生体システムよりも簡略でかつ制御しやすいモデルシステムを用い、ソフトマター(物質)の非平衡挙動が“生き物らしさ”を生み出すメカニズムを研究しています。例えば、一つの分子や微粒子に自在に力を加えたりその位置を操作する技術(光トラップ、AFM)を用いて、微小な空間に人為的な非平衡環境を作り出して、その振る舞いを観測します。

細胞内非平衡力学計測装置 一分子非平衡ダイナミクス計測装置

 

特別研究(新4年生)
 特研生にも机・椅子そして個人用のPCが支給されます。物理計測や解析を行うために必須である各種のソフトウエアの使用とプログラミング方法に慣れてもらいます。このことはR&Dに就職活動をする際には一つの売りにできるでしょう。また、”molecular biology of cell”, “biological physics”やその他研究に直接関係する学術論文の輪読を予定しています。後半には、自分のテーマを持って研究活動を行い、物理学会の九州支部会で発表することを目標とします。前期に勉強したことを基に、議論・相談してテーマ設定します。特に、当研究室では、細胞内部のようなミクロな環境や1分子の非平衡特性を調べるための世界でも他に類を見ない装置(光トラップやAFMの原理を用いた自作機器)を開発してきました。これらを利用しつつお互いにアイデアを出し合い、ソフトマターの非平衡特性を解明する最先端の実験的研究に取り組みましょう。

年間行事
・新歓
・バーベキュー
・院試壮行会、お疲れ様会
同じ実験グループである木村グループと合同で行うことが多いです。また、最近は複雑流体研究室と合同で行ったりもしています。
上記以外にも各出張、学会などの発表会終わりにメンバーのお土産のお酒などを持ち寄って、小規模の飲み会を開催しています。
また、ニュートン祭の球技も、運動好きなメンバーが多いため、よく参加します。その他も研究室メンバー各自で運動を行ったり、居酒屋、バーなどに行ったりしています。

進学先・就職
 物理学専攻ですが、光学系、生物系、化学物質系を扱っていて研究は多岐にわたっています。その為、就職先も多岐にわたります。近年は医療系、電気系、材料系などの研究職や営業職に就職したOBの方もいます。
また、技術、研究職以外にも、公務員や学校教師を目指すメンバーもいます。